実家の相続手続きで、難解極まりない行政資料と格闘している。専門家に頼もうかとも思ったのだが、うちは家族構成も資産もごくごくシンプルだったので、ざっと調べたら自分でできないこともなさそう、一生のうちにそう何度もやることでもないし……と思い、自分で手続きすることにした。
そのプロセスで、ひとつ自分でやってよかった、と思うことがあった。それは、父の出生以降の戸籍をすべて見る機会ができたこと。
父の実家がある市の役場から戸籍を取り寄せたのだが、1947年生まれの父の戸籍は当たり前のことながら手書きだった。市役所からの通知を開いた瞬間、わたしの目はその戸籍に釘付けになった。
そこで、わたしは自分の曽祖父母4人の名前をはじめて知ったのだった。
父方の祖父母は遠方に住んでおり、祖父はわたしが中学生のときに他界してしまったので、そこまで行き来は多くなかった。だからゆっくりと昔の話を聞く機会もあまりなかった。
手書きの文字で綴られた戸籍を眺めながら、これまで長い時間をかけて多くの人たちの縁が奇跡のようにつながり、今自分がここに生きているのだと実感した。とても不思議な感覚だった。
父方の祖父母、そして曽祖父母。今取り寄せられる戸籍でわかるのはそこまでだったけれど、母方の祖父母、曽祖父母、さらにその前にもご先祖さまがいるわけで、その途方のなさにくらくらしてしまう。
この感覚を味わえただけでも、とてもよかったと思う。