#655 そういう歳【三日坊主とひとりごと】

「分人」とは、本当によく本質をついた言葉だなと、しみじみ思う。ひとりで自由気ままに、ときにはひざを抱えたりしながらすごしてきた環境に戻ってくるたびに、スイッチが切り替わる音がする。

人にはいくつかの役割があって、いつもは無意識にすごしていても、それを「果たさなければいけない」瞬間がおとずれる。すると不思議なもので、意識はしなくても自動的に精神と身体がそのモードに入るようだ。

あまりにも切り替え回数が多いと、大元のエンジンが稼働するまでに時間がかかるし、メンテナンスモードとしてじっとベッドに横たわる時間が必要になるけれど、そのサイクルもどうにかやりすごしている。

最近、朝起きて仕事に入る前にけっこうちゃんとメイクをするようになった。外に出る予定がなかろうと、オンラインミーティングがなかろうと、だ。そのために、実に10年ぶりくらいにマスカラなぞを買ったりした。

自動スイッチだけでは無理がでてきたからこそ、なにかの儀式的な行動が必要になることもある。これまた不思議なもので、しっかり顔に化粧をほどこしていると、すっぴん部屋着で過ごしているときのように、日中ベッドに倒れ込む……みたいなことをしにくくなる。

そういうスイッチ的なものが、そろそろわたしにはいくつも必要なのかもしれない。なんとなく、で生きてきたこれまでの延長では、カバーしきれないことが増えた。

わたしは40歳になった。もう、そういう歳だ。