#624 実家の夜【三日坊主とひとりごと】

久しく家族の顔をみていなかったので、仕事の合間をぬって実家に戻ってきた。コロナ禍に入ってから、年末年始やお盆など、帰省組や観光客が多そうな時期はできるだけ東京から出ないようにしている。

家族とは仲がいいけれど、わたしはあまり地元に思い入れがない。友達もほとんどいないし、田舎なのでかつて行きつけだった店みたいなものもまったくない。

だから家族に近況報告する以外に、地元にしょっちゅう帰ってくる理由がなく、どうしても足が遠のいてしまう。

「地元に貢献したい!」と熱い想いをもってUターンしたりする人たちが、わたしの目にはとてもまぶしく映る。

おそらくこの先、家族になにか大きなできごとが起きない限り、わたしが地元で暮らすことはないと思う。かといって、ずっと東京に住み続けられる気もしない。

都心からはほどよく離れていて、それなりに自然に触れられて、でも交通の便がある程度よくて……というところまでイメージして、いつも、わたしの思考は停止する。

別にいま、生活を新たにする場所を探したいわけじゃないのだと思う。わたしは東京の片隅にある、小さなアパートの部屋でのひとり暮らしを愛している。

たぶん、自分が思っているよりも、けっこう強く愛している。

それでも少しばかり歳をとってきて現実をつきつけられる。ひとりですべてができなくなったら、この暮らしもおしまいなのだ。

そんなことを、わざわざ実家に帰ってきてまで考えてしまう夜。