「自分らしさ」とか「ありのままで」とか、そういった類の言葉を安易に使うのが、あまり好きではない。本質を掘り下げることなく表面的な消費に使われて、何の実にもならないことの方が多いから。
そんなわたしがいま、人生ではじめて“自分の素”について考えている。
自分の心身からあらゆるアラートが発せられているのを感じたとき、仕事も含めた生活、これからの人生について、立ち止まって見直さざるを得ないと思った。
そこでふと、今まで生きてきたなかで、わたしが“素”のままですごしていた時期って、いつだっただろう? と考えた。
頭に浮かんだ答えは「高校時代」。
正直、この結論は自分でも意外だった。いちばんアクティブに活動していて、今にもつながる交友関係が築けたのは間違いなく大学時代だし、フリーランスとして、ある程度は自由に仕事ができるようになった頃もまあまあ楽しくやっていた。
でも高校時代はちょっと違った。
わたしが通っていたのは、家から往復3時間かかる、県内の進学校。周りがみんな優秀で自立していて、人づきあいはかなりラクだった。
もともと社交性に欠けるわたしは、友人とつるみすぎることもなく、ただ毎日、図書館に入り浸って好きな本を物色しては読みあさっていた。当時の読書体験は、いまの自分にも大きく影響している。
じっくりと音楽や本に触れて、ほどほどに健康的な生活を送る。いまの自分が望んでいるのは、そんな日々なのかもしれない。