休日の渋谷で人と待ち合わせたのなんて、どのくらいぶりだろうか。
仕事柄、アポがあれば渋谷の街を行き来はするけれど、休みの日は、できれば降り立ちたくない場所である。
日曜日のお昼前、11時台の渋谷は、いつもの喧騒がうそみたいに人がまばらで、なんだかこちらが不安になってしまうくらいだった。
高層ビルのカフェから見下ろしたスクランブル交差点。人の波がない。横断歩道の白線がむきだしに見えて、バキバキといつものように派手に切り替わっている街頭ビジョンは、どことなく居心地が悪そうだ。
のんびり食事をしていると、さすがにだんだん人が増えてきた。それでも、休日の道玄坂をこんなにスムーズに歩けるなんて。と、違和感をぬぐいきれない。
不要不急の用事以外は、外出を自粛せよ。
どこまでが不要で、どこまでが不急なのか、よくわからない。家から一歩も出ないわけにはいかないから、わたし自身はできるだけふつうに、日々を過ごしている。
大きなイベントは軒並み中止になっているけれど、友人と食事したり、気分転換をする余白は持っておきたい、と思ってしまう。
マンガやドラマで見た世界が、現実になることもある。10年ぶりに、そんな気分を味わっている。
あのとき、会社員だった自分は「これでは、縛りつけられて何にもできない」と、なんだか絶望的な気持ちになっていたのだった。
あれからわたしは、何か変わったのだろうか。自分に問うけど、よくわからない。