わたしは宮崎駿監督の信奉者なので、ジブリ映画の中でコンプリートしているのは、宮崎監督作品だけだ。
『火垂るの墓』『思ひ出ぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』の3作は見ていたけれど、高畑勲監督の作品に、宮崎監督に対するほどの思い入れは、正直なところなかった。
強いて言うなら「なんだか独特な、捉えどころのない作家性」なんて思っていた。(生意気すぎる感想だけども、いち鑑賞者としての感覚)
見ようかな、どうしようかな、うーん。と思いながら劇場公開がすぎてしまったのは、『かぐや姫の物語』。
それが、ついこのあいだ、ミニシアターで限定公開するというので、いそいそと阿佐ヶ谷まで足を運んできた。
鑑賞直後の感想は、正直……「あ、そうですね。すごかった……です」みたいな。
確かにアニメの表現はすごかったし、背景の美術も美しいのひとことに尽きた。「姫の犯した罪と罰」というコピーも、「鈴木敏夫さん、天才かよ」と思った。
でも、どうにもピンとこなかった。おはなしは、まんま「竹取物語」である。幼馴染が出てきたりと多少の脚色はあったけれど。
そんな感じだった。見終わった直後は。
でも、時間が経てばたつほど、物語の余韻がどんどん深くなっていった。
ふと「果たして、姫はしあわせだったのだろうか」と思考が浮遊して、大切な人の人生を重ね合わせてしまったからだ。
もう本人に聞くことはできない。永遠に答えはない。しあわせだった、とだけ、信じたい。