「トーストにバターかいちごジャムがつきますが、どうされますか?」
さも当たり前のように聞かれた質問に、「んあ?」と、混乱するくらいにはまだ寝ぼけていた。
午前中から渋谷で打合せがあるので、モーニングついでにコメダ珈琲にきていた。「トーストにコーヒーをつける」のではなく、「コーヒーにトーストがついてくる」スタイルにも、まあ多少は慣れてきたところだ。
しかし。今日わたしが注文したのは、「たまごペースト付き」のトーストだったのだ。頭の中には、カリっと焼かれた厚手のトーストに、たまごペーストをのせて口に運ぶ絵しか浮かんでいなかった。
だから、店員さんが口にした「バターかいちごジャムをつけますか?」という質問は、ふいうちにもほどがあった。
わたしの知らないところで、たまごペーストを直にスプーンですくって食べる文化があるのだろうか? それとも「たまごといちごジャム」という、36年も生きてきたのに触れたことのない未知の領域が残されていたのか?
「ああ、トーストにバターをうすーくぬって焼いてくれるってことか」と合点がいくまでに、「え? あ、たまごペーストのやつを頼みたいんですけど……」と要領を得ない返事を繰り返したのはご愛敬。
たまごペーストをたっぷりつけてトーストをかじり、ブレンドコーヒーをブラックでちびちび飲んでいたら、やっと脳みそが回転をはじめた。
さて、そろそろミーティングの時間だ。今日も一日がんばる。