#465 Stray Dogsに魅せられた夜(2)【三日坊主とひとりごと】

→ 464からつづく

「16歳で上京したときから、ずっとバンドをやりたかったんですよ」

ステージの彼は、そう言っていた。とてもうれしそうに。

2019年4月29日。わたしは久しぶりに、七尾旅人さんのワンマンライブに訪れた。

今回は、ソロではない。バンドのライブだ。しかも、20周年記念ツアー。

彼の本格的なワンマンライブをホールではじめて見たのは、2014年だった。

あのとき、日本青年館の「舞台」と「客席」にくっきりわけられた空間に立った彼は、なんだか、とても所在なげに見えた。

少なくとも、下北沢の小さなカフェで演奏したときのような柔らかな自由さや、渋谷のライブハウスで大勢のミュージシャンに囲まれ、ノイズを出しまくって大暴れしていた勢いは、影をひそめていた。

なんだか、彼はずっと苦しそうだった。音を身体の中からどうにか絞り出しているような……。

でも、今回は違った。

『星に願いを』にはじまり、アルバム収録曲を全曲、観客と歌ったかと思えば、これまでの代表曲をバンドサウンドで怒涛のように畳みかけ、アンコールは電気グルーヴの『虹』に『Wonderful World』。

バンドの演奏と共に、のびやかに歌う彼はなんだか終始しあわせそうで、わたしは前のライブを思い出し、勝手に涙ぐんだりしていた。

「16歳のときから、夢だったんですよ」

彼は、何度もそう言っていた。20年かけてたどり着いたステージで。

その温度は、すばらしい音楽と共に、確実にわたしたちに届いた。

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2,220(2019月10月17日 14:37 詳しくはこちら)
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