#454 真夜中のレモン・チェッロ【三日坊主とひとりごと】

桜は、昨日の雨で半分くらい花びらを散らしてしまっていた。ちょっと肌寒さが残る帰り道。それはまだお昼をすこしすぎたくらいの時間で、ふといつもの帰路で立ち止まり、別の路地へと足を向けた。

今日はもう、あとは家で仕事を進めるだけ。なじみのカフェで、休憩用のお茶菓子でも買っていこうと思ったのだ。

引き戸をガラガラと開けて、最初に目に飛び込んできたのは、焼き菓子が並ぶ棚の一画に盛られたレモンだった。

けっして、ぴかぴかでつるんとしたレモンイエローの果実ではない。でこぼこしていて、ところどころが黄緑で、皮にはゴツゴツした黒い点も見える。『国産レモンのおすそわけ』と、POPに買いてあった。

昨年、無農薬のレモンをどっさりと買ったことがあった。それはもう衝動的に。

3分の1はハチミツに漬け、あと3分の1はウォッカに漬けた。残りは冷凍庫へ。(実はまだ、使い切れずに残っていたりする)

果肉を食べるわけでもないし、料理にばんばん使うわけでもないのに、なぜかわたしは「レモン」という果物にひかれてしまう。

梶井基次郎かよ。

レモンをひとつ、買って書店の棚に置いてくる……なんてことはしないけれど、なんとなく、その隣にあった「レモンケーキ」を手に取った。ついでに、ショーケースに並んでいた「レモンのタルト」も注文する。

そういえばウォッカ漬けのレモンは「レモン・チェッロ」というらしい。週末あたり、久しぶりにウォッカで酔い倒そうか。