とくに夢や野望をもたずに仕事をしてきたわたしにも、「童話作家ってなんかすてき」なぞと憧れを抱いていた時代があった。まだ10代の頃のことだ。
ただふんわりとした「なんか、いいなあ」なんて気持ちと、勝手にふくらませた妄想だけでものごとを考えていた、ただただ世間知らずの子どもの頃の話。
作家というのは、どうやってなるんだろう。と、ふと考えた。何もわからなかったので、とりあえず関係ありそうな本を読んだ。気がする。
もうどの本を読んだのか、本じゃなくてTVのドキュメンタリーか何かだったか、すっかり忘れてしまったけれど、あるとき、わたしはこんな言葉に出会った。
「『どうやったら作家になれるか』なんて考える前に、作家になる人はもう作品をいくつも書いていますね」(うろ覚え)
たぶんこんなニュアンスだったと思う。
そのときのわたしは、「ハッとした」とか「衝撃を受けた」とかじゃなく、「いや、そうですよね」と、なぜかものすごく納得してしまった。
本当に作家になりたかったなら、悔しく思っただろう。でも、わたしは違った。
所詮、自分の中にある「作家」への憧れは、その程度のものだったんだな、と気づいた瞬間でもあった。
「●●になりたい」と思うことが、悪いわけではない。でも「なりたい」の本気度は、行動ですぐバレる。
いま、わたしは「ライターになりたい」人に出会うことが多い。本当に「なりたい」のなら、やるべきことは明確なはずだ。