これまで語り継がれてきた多くのものがたりは、「結婚しました! 」「仕事で成功しました! 」--そこでとりあえず、「めでたしめでたし」というものだった。
以前、参加したイベントでそう話していたのは、クラシコム代表の青木耕平さん。
実は、僕らが提供しているコンテンツの中で今人気の高いものが、美しい白髪の女性の暮らしぶりを紹介するコンテンツなんです。読んでいるのは30代から40代の女性です。
つまり、彼女たちにとって「美しい白髪の女性の暮らし」はエピソード2で、物語がもう1回ハッピーエンドを迎えるのを待っているということなんです。(本文より引用)
その時点で、主人公のほとんどは20代とか30代。
多くのフィクションでは、あくまでスタートにすぎないことが「ゴール」みたいに設定されていて、“その後”が語られることはほとんどない。
でも実際はそこからが、本番なわけだ。さらにプラス何十年、という時間があるわけだから。
先の人生のこと、考えても仕方ないけど、ときどきぼんやりと想いを馳せる。
「老後」「定年後」みたいにざくっとした雑なくくりでは、どうしたって人生に悲観的にならざるを得ない。
個人で事業をはじめてから、なおいっそうその気持ちは強くなった。
事実、現行の社会保障制度と照らし合わせてみると、「独身」「個人事業」「女性」と三拍子そろったときの脆弱性たるや、ほんとうに絶望するレベルだから。
そうじゃなくたって、生きていく道はいくらでもあるはずだよね。
別に明確なロールモデルがなくたっていい。そんなの幻想にすぎないから。
でもときどきこんなものがたりに触れると、「ああ、こんなのもありですよね」と、凝り固まっていた未来がほどけていくような気がする。
「こうなりたい!」じゃない。「これもあり」と思えることが、安心とすこしの希望をくれる。