さまざまなことを「言語化」するのが、わたしの仕事だ。と、思っている。
もやもや、ふわふわした霧のようなものを少しずつ払ったり、絡まった糸をちょっとずつほぐしていったり、あちこちに散らばったカケラを順番に並べて整理したり。
本人がうまく言い表せないでいたことを、代わって表現するようなイメージ。
いちばん最初に、仕事として「誰かの気持ちを言語化」したのは、25歳のとき。第二新卒で入社した会社でのことだった。
そのときの私は右も左もわからない新米ディレクターにすぎず、ライター経験も当然、ゼロ。ただ「書くことにも興味はあります」、と面接で一応、付け足しておいた程度だった。
「書く仕事」ができるのは書籍や雑誌の世界で、ごくごく一部の、ものすごくセンスや実力のある書き手だけだと思っていたから。
でも「書くことにも興味がある」という私の言葉を受けた社長が、自社の採用ページをつくるとき、「ライターやってみる?」と声をかけてくれた。要は、「求める人材」とか「社長メッセージ」なんかのゴーストライティングである。
わからないなりに取材し、とにもかくにもメッセージを書いた。そこまで時間はかからなかった。
しかしその仕事が、えらく褒められた。ほぼ一発OKだった。
自分の文章が、はじめて仕事で評価された。その体験は大きかった。
どの力が相手の役に立つかなんて、自分ではわからない。第三者の評価を受けてはじめて、見えることがある。