この頃、更新を楽しみにしている『経営者の孤独』という連載がある。
書き手はライターではなく、小説家の土門蘭さん。近年インターネット上にあふれるようになったごく普通のインタビュー記事とは、一線を画している。
記事の構成、語り口、文章のクオリティ(小説家の方をつかまえて失礼だが、ここはあえていいたい)、読みはじめると完全にひきこまれてしまう。読後感は、「充実した読書体験」をしたときの余韻に似ている。いい。
記事はもちろんのこと、すばらしいのは「対話の姿勢」なのだと思う。
たとえばこことか。
青木 ああ、わかった。つまり、土門さんは、僕より寂しくない人なんですよ。
土門 え?
青木 先ほど土門さんは、「常に誰かに依存してしまうかもしれないと思っていて、寂しい気持ちになる」っておっしゃってましたよね。それはつまり、「寂しい」っていう感覚を持ち続けられるということなんですよ。自分のなかにある自然な感覚をストレートに受け入れつつ、正気でいられる。だからむしろ、僕なんかよりずっと依存していない、自立している人なんだと思います。
土門 ……そんなこと、初めて言われました。
青木 僕は「寂しいなんて感じたことない」とか言いながら、一皮むけたらクソ依存野郎で寂しがりなんですよ、きっと(笑)。それがひどすぎるから、心に鍵をかけているのかもしれない。
土門 正気を保つために。
青木 そう、正気を保つために。
これ、すごくない?
おたがいに答えなんてもってない状態で、丁寧な対話によって引き出されるインタビュイーの内面。うまくいえないけど、「質問と回答」とか「ただの会話」じゃない。「対話」なんです。できないよ、なかなか。
昨日、更新されたのは、長野県でパンと日用品の店「わざわざ」を経営する平田はる香さん。ご本人のnoteを読んで、すっかりファンになってしまった経営者のひとりだ。
わたしも「ひとり志向」がもともと強い人間だからか、なんだか、ものすごく、「そもそもひとりで黙って読んでるのにさらに押し黙ってしまう」ような気持ちになった。
一応、わたしもこれからは、しがないイチ経営者になっていくわけだけど。
この「対話」を、経営者としても、書き手としても、これからも折に触れてくりかえし、かみしめてみたいなと思っている。