できるだけ、手触りのいい紙でパンフレットをつくりましょう。わたしはいつも、クライアントにそう提案する。
ツルツルでもザラザラでも、しっとりでもピカピカでも、なんでもいい。
たかが紙質、されど紙質。「いい紙」は、それだけで大事にされる要素のひとつになるから。
ペラペラな安い用紙に刷ったチラシは、ペラペラなチラシとして扱われる。つまりはそういうことだ。(そのままだけどな)
どんなに重要なことが書いてある冊子やパンフレットでも、ペラペラなチラシ的な用紙でつくられていると、それだけで雑な扱いを受けかねない。
それは、たぶん人間の本能みたいなものだと思う。
いつも本を読むとき、なにも気にせず片っ端からドッグイヤーをつけるわたしだけど、この本を手にとって読みはじめたとき、紙を折ることをためらった。
「この本は、ぞんざいに扱えない」
装丁のこだわり、手ざわりある用紙の選び方、ていねいな文字組み。
手にとったときから、すみずみまでゆきわたったこだわりが、なんとなく伝わってきたのだ。
大事にしなくちゃ。折ったりしたら、この美しい本が損なわれてしまう。そう思って大事にページをめくった。
“手ざわり”は、あなどれない。
制作コスト面を重視しようとすると、「紙の値段」は真っ先に削られる対象だ。
しかしすばらしいデザインを引き立てるのも、受け取った人に温度感をダイレクトに伝えるのも、「紙の手ざわり」によるところが大きいのである。