「やめる」ことより、新しくはじめること、やらなきゃいけないことが増えていった。
「やること」がとりあえず目の前にあれば、何も考えなくても1日が終わり、バタンキューで眠りにつくことができた。
どんなにスケジュールがきゅうきゅうでも、「ことわる」のは怖かった。
会社をやめてしまい、もうわたしの口座に給料が自動的に振り込まれることはない。それにいつ、どんなことが起きて仕事ができなくなるかわからない。
ちょっとでも可能性があることは、そこにあるならあるだけ、抱えこんでおきたかった。
「たちどまる」ことも、ずいぶんしていなかった。
はたと気づいたら目の前にいくつかの分かれ道があって、「で? あんたこれからどうすんのよ」と問われているのがわかった。
ここ半年くらい、「やめる」「ことわる」「たちどまる」3つのことを、意識してやってきた。
かなり、勇気が必要だった。
やめることを決め、これまでならふたつ返事で受けていたことをことわり、たちどまって自分と向き合う。
正直なところ、収入は一時的に減っているし、けっこうへとへとである。
でも霧がちょっとずつ晴れていくに従って、「つぎのなにか」がはじまっていることを感じさせる、ちょっとした出来事が舞い込んできたりしている。
可能性を断つことが、ほかの可能性につながる。
それを何年かごとに、こうやって繰り返していくんだろうか。
願わくば重ねた経験が、いい味になっているといいんだけど。