ふと、ずっと前に読んだひとつの記事を思い出した。
ジャンプすれば届くかなというボールは投げない。でも一度でもボールをキャッチし損ねたら終わり。しかしそれはフリーにはわからない。発注主は自分たちの経験の糧にはするが、わざわざ伝えないのだ。育てる義務はない。お金を払っているから期待して色々言うのではなく、お金を払っているからこそ何も言わないのだ。残酷な話だけど。
この1年くらい、わたしはここに書いてあることを、ほんとうに骨身にしみて実感してきた。
フリーランスには、転勤も昇進も部署異動もない。入社してきた新人の面倒を見ることもなければ、誰かをマネジメントする機会もない。優れた上司に引っ張ってもらえることも、残念ながら、まったくない。
それなりに自分の得意分野を確立できて仕事が回るようになってくると、「自分ができることを」「できる範囲で」提供するスタイルが、知らず知らずのうちに固定されていく。
いつの間にか。自分でもあまり意識しないうちに。
居心地がどんどんよくなるから、ゆるやかな坂道に気づかない。もちろん、少しずつ下っていく坂道に。
キャパシティを超えた仕事を「断りたくない」と感じてしまうのは、その坂道が怖いからだ。「コントロールできるのがプロでしょう」なんてことは、重々承知のうえである。
そんなことわかっているけれど、下り坂で加速する前に、自分にとっての“限界”を、すこしでも飛び越えておきたいと思ってしまう。
「ターニングポイント」は、向こうからはやってこない。自分で意識してつくりにいかない限り。
わたしも35歳になり、フリーライター歴は5年を超えた。
そろそろ、仕掛けなきゃいけない時期だなあと思っている。次の「ターニングポイント」を引き寄せて、じわりじわりと下がる坂道を、再び上り坂に変えていくために。