ネタバレしたい。この作品のことにふれるなら思いっきりネタばらししたい。「ねー! すごいよね! あんな結末みたことないよね!」と、誰かとはしゃぎあいたい。
願わくば、まだエンディングのを知らなかったころにもう一度、戻りたいと思う。そしてもう一度、まっさらな状態で映画館のスクリーンを見つめてみたい。
ミステリーがすきになった理由、いまとなっては全く思い出せないけれど、中学生の私は、地元の小さな図書館でたまたま借りた、アガサ・クリスティの小説にのめりこんだ。
ただその作品に限っては、たしかTV放映されていた映画版を見たのが最初だったと思う。
「オリエント急行殺人事件」。いわずとしれた、名作中の名作である。
小説を読んで思い描いていた“エルキュール・ポワロ”のイメージそのままに、立派な口ひげをたくわえた俳優が難事件を解決していく。脇を固める、豪華な出演者たち。(当時はぜんぜん知らなかったけれど)
そして、衝撃の結末。
あのとき心底ゾクゾクっとした感覚が、もう二度と味わえないと思うと、ちょっぴり悲しい。
新作映画、決して悪くはなかったけれど、やはり10代のときに感じた衝撃が大きすぎて、なんだか消化不良のままエンドロールを迎えてしまった。
とはいえミステリーには、結末がわかった後も楽しむ余地がある。はりめぐらされた伏線を一つひとつたどりながら、もう一度小説版を読もう。久しぶりに、1974年版の映画も見てみよう。