ふと、思い出したこと。
さかのぼること、10年前。
大学を卒業して、編集の仕事に
つきたいと思っていたわたしは、
大手・中堅出版社の
採用試験に片っ端から落ちて、
小さな編集プロダクションの
求人をあれこれ探していた。
たぶん、自分はそれなりに
がんばって仕事するタイプだよな、
と思っていた。
出版の世界が、昼も夜も休日もないこと。
それもなんとなくわかってたけど、
「まあいいか」と。
しかし、求人を見ているうちに
いつしか私の心はすっかり折れていた。
「給与手取り15万円」
当時、小さな編プロの給与は
そんなんばかりだった。
東京でひとり暮らし、その金額で、
朝から晩まで働いて、
本当に生きていけるのか。
さすがに、躊躇した。
私は、カンタンに
「お金なんてそんなに重要じゃない」
という人を信用できない。
発注する人も、それを受ける側の人間も。
お金は「責任」を媒介するものでもある。
お金を払うに値する価値を、
責任もって提供したいじゃない。