#213 東京【三日坊主とひとりごと】

その日、
何人もの「信じられない」
というつぶやきを、
SNSで目撃した。

その人の名前は知っていた。

でも、書かれたものは
読んだことがなかった。

そもそも、
女性が書いたエッセイを、
私はあまり手に取ることがない。

なぜなら“リアルな共感”を
求めていないからだ。

というか、
「ぜんぜん欲してない」
といったほうが
正しいかもしれない。

赤裸々な心情にふれること、
ゆきすぎる共感は
自分自身がしんどくなるだけだから。

こころに何かが突き刺さり
ひりひりした気持ちを抱えたまま
本を閉じて得られるものって

一体なんだろう。

そう思っていた。

でもなぜか、この本は
いまの自分で
読んでみたいと思った。

本の中には、わかるところも、
わからないところもあった。

でも、私は東京がすきだ。

雨宮さんが切り取って
見せてくれた“東京”も。

訃報に接してから
本を手に取ったのはわたしなのに、

帯にでかでかと記された
「追悼」の文字が

なんだか許せなくて
細かく破って捨てた。