2008年秋にリーマンショックが起きたとき、私は心底ほっとしていた。なぜならほんの2ヶ月前に、どうにかこうにか第二新卒として転職に成功して、めでたく(?)はじめての正社員になったばかりだったからだ。
失業保険の給付はギリギリ、あと2ヶ月遅れていたら……と考えただけで、身ぶるいした。
まだフリーランスで生きていくとか、自分の力で道を切り開くとか、そんな意識はまるでなかった頃の話。どこかに就職しないと、生きていけないと思っていた。
そこはとても小さな会社だったし、制作系のプロダクションの大半が(たぶん)そうであるように、そこまで充実した給与体系ではなかった。当たり前だけど。
何十年も公務員をしていた父親に、「えっ、住宅手当とかないのか?」とものすごく心配されてはじめて、「あ、住宅手当とか、会社からもらえるものなんですか???」と思ったくらいだ。何も知らなかった。
加えてリーマンショックのあおりで仕事が減り、人生で一度もボーナスをもらうことなく、私は会社員を辞めた。
いま、フリーランスとしての働き方にとても満足しているし、もう二度と会社員には戻らないだろうな、と思う。でもときどき、そういう境遇をうらやましく感じてしまうこともある。隣の芝は、いつだってとても青い。
だから……というわけではないけれど、フリーライターでもこのくらい夢のある働き方できるよ、というのを、自分が体現できたらいいなと思ったりする。