#326 タチの悪いライターズ・ハイ【三日坊主とひとりごと】

近ごろ、活躍する同世代の人に取材することが増えた。おもしろく刺激的。新しい世界へのトビラ。すてきな思考、身につまされるエピソード、聞いているうちに「なんか頑張んなきゃな」と思わされる時間。

泥だらけで沼のような道に足をからめとられそうになりながら、その人が必死に歩いて得た知識や経験。

一つ、ひとつ言葉ですくいあげるたびに、なんだか自分も、ちょっと賢くなったような気になってしまうことがある。

それはとても危険。キケンな兆候だ。とくにその人が発した言葉を脳みそにインストールして、1本の原稿をどうにかこうにか書き上げた直後なんて信じられないくらい危うい。

なんだかちょっと、自分がいっぱしの経験を得たような得体の知れない達成感。それはすこぶるタチの悪いライターズ・ハイなのである。

だからときどき、自分自身に言い聞かせる。

「それは お前の 手柄では ないッ !!」

ちなみに。この話そのものが、とあるクライアントの取材で聞いた話であるということも、あとから付け加えて自分に言い聞かせている。

「あの頃の自分は、盛大な勘違いをしていた」と、その人は言った。外部から手を差し伸べ、サポートした企業が上手くいくこと、成果をあげること。それが自分の実力だと思っていた、と。

その取材をして以来、「自分がそこで果たす役割」について意識するようになった。必要以上に卑下する気はないけれど、自分の身の程は、わきまえておきたい。