#321 その“コンセプト”がつないでくれたこと【三日坊主とひとりごと】

若年性認知症により、ピアノが思うように弾けなくなった妻。寄り添うように、コントラバスを奏でる夫。

たどたどしく鍵盤を叩いていた手が、ふと止まる。彼女は、かたわらの夫を見上げる。

「もう一度弾いてもいい?」

優しくうなずく夫。そしてもう一度、演奏がはじまる。あたたかい視線をそそぎ、最後の一音まで耳を傾ける観客(レストランのお客さん)たち。

……もうダメです。書きながら思い出し泣きしそう。

わたし、コンセプトメイキングのノウハウを勉強しようと思ったんじゃなかったっけ……と、ひとしきりグズグズと泣いたあとに、我にかえった。

いろんな“動画授業”配信サービスの『schoo』にて、みかけた授業のひとつ。

「注文をまちがえる料理店から学ぶコンセプトメイキング」。

「注文をまちがえる料理店」とは、昨年話題になった、認知症の方がウェイターをつとめる企画型のレストランだ。

ニュースで知り、すばらしい取り組み、すばらしいコンセプトだなあと感銘を受けていた。

最近、わたし自身もコンセプトメイクについていろいろと頭を悩ませていたので、参考にしたくて動画を視聴したワケである。

決して、冒頭に書いたシーンのような、感動や美談を消費したいわけではなかった。

このコンセプトのもと、この企画が実現していなかったら、きっとわたしは知ることのできなかった人たちの姿。

その事実の重さやは、思っていた以上に自分のこころに深く突き刺さった。