「書く」ことをはじめたとき、机のうえに広げていたのは、400字詰めの原稿用紙とエンピツだった。
コピーライター・岩崎俊一さんの仕事のなかに、「人は、書くことと、消すことで、書いている。」(トンボ鉛筆)という名作コピーがあるが、当時はほんとうにその言葉通りのことをくりかえしていた。
あーでもない、こーでもないと消したり、書いたり、また消したりしながら、原稿用紙の最後の1マスまでどう埋めるか、悪戦苦闘していたものだ。
言葉をつづるのに、当たり前のようにキーボードを叩くようになったのはいつからだろう。
テキストを書くのはPC、ソフトはWord。それがデフォルトで、なんの疑問も抱かなくなっていたけれど。
noteが登場したとき、Webサービスにはめずらしい、明朝体の入力画面に歓喜した。はずかしながらそこではじめて、私はPCにも「書きやすいフォーマット」があることを認識した。
小さなノートPC、ポメラ、スマホの音声入力。いろいろ試したけれど、どれも私には合わなかった。結局、基本的には自宅のデスクトップを使い、Wordで原稿を書いている。
最近はリリースされたばかりのMacのアプリ「stone」が、なかなかいい感じだ。このテキストも、stoneで書いている。
シンプルで真っ白な画面に美しい書体で言葉を並べていたら、なぜかわからないけれど、まっさらな原稿用紙に、エンピツを握りしめて向き合っていた頃を思い出した。