#010 恋に落ちた瞬間 【三日坊主とひとりごと】

5歳くらいから、大学受験の手前まで
ピアノを習っていた。

幼いころから当たり前のように
通っていた習いごとだったから、

正直、「好きだ」という感覚は、
あまりなかった。
それにしてはよく続いたなと思うけど、
ほんとうにそうだった。

大学に入って実家を出て、
家にピアノがない生活がはじまると

「ああピアノ弾きたいな」と思って
自分でびっくりしたのを覚えている。

いくつかのサークルを回って、
出会ったのはJAZZ愛好会。

comicoで連載しているマンガに
『JAZZ男!』という作品があるのだけど

主人公の男の子が、
ジャムセッションをはじめて見て
衝撃を受けるシーンがある。

それを見ていた、お店のお姉さんが言うのだ。

「あなた、ジャズに恋したでしょ」

18歳だった私も、
一瞬で恋に落ちた。

今ではすっかり楽器に触れることも
なくなってしまったけど。

辞めてしまったつもりはないんです。
まだ、あのとき感じた高揚感が、心のどこかに残っているから。