#007 犬神家の一族【読書メモ2025】

7冊目:犬神家の一族

昨年末くらいに、横溝正史のドラマシリーズ(70年代の作品)をたまたま見返したくなる波がきて、ひと通り映像作品を眺めた。でもそういえば、ちゃんと小説は読んだことなかったような気がして、改めて。

表現が平易で、背景が理解しやすく、登場人物が全員キャラ立ちしていて、なるほど大衆受けする理由がよくわかる気がした。あと、あれだけ映像化されているのも納得。映像的な小説なんだな。

それにしても、第二次大戦直後の日本社会の昏い部分というか、時代の空気感みたいなものがグロテスクなまでに表現されている気がしたんだけど、小説版がいちばん色濃いんじゃないかな。

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松本清張作品を読むときも思うけれど、出てくる女性が、(時代的に当たり前なのだが)全員男性に依存して、家に縛られて生きている。

一面的に「女の嫉妬は怖い」みたいにとらえられることもあるのかもしれないが、この作品で描かれているのは、そうしないと存在意義が認められない、そもそも生きていけない女性の哀しさだと思った。