20年前、学生時代に中国映画や香港映画、韓国映画をよく見ていた時期がある。そのとき、大切な作品にいろいろと出会うことができた。
ウォン・カーウァイ監督の『花様年華』や『2046』、『インファナル・アフェア』、それらの作品を彩るトニー・レオン、アンディ・ラウ、コン・リー、マギー・チャン、チャン・ツィーなどの名優たち。
なかでも特に衝撃を受けた作品のひとつが、レスリー・チャンの代表作である『さらば、わが愛/覇王別姫』だった。
学生時代、中国の近現代史に興味があったので、歴史的な背景を色濃く反映した中国の映画作品を好んで見ていた。この作品も、なんとなく選んだDVDの1本にすぎなかったと思う。
「歴史の流れや社会の変化に、個人の人生が翻弄される作品」みたいな認識をしていた記憶がある。むしろそういう風にしか捉えられていなかった、ともいえる。
この名作が今、4Kでリメイクされ上映中であることを知って、慌てて映画館に駆け込んだ。
こんなに美しい映画だったんだ、と、20年のときを経て思った。
映像美だけじゃなくて、哀しみとか、絶望とか、やり場のない感情とか、理不尽に対する怒りとか、人間の業みたいなものをすべて“美しく”描いている気がした。
一応、わたし自身も薄っぺらいながら20年の人生を歩んできたわけで、当時とはまた違う感情がこみあげてきた。
この作品を、今、スクリーンで見られて本当によかった。良い時間だった。