#659 リアルタイムに【三日坊主とひとりごと】

映画『君たちはどう生きるか』を観てきた。

正直、引退会見なんて1ミリも信じていなくて、きっとまた作品つくるんだろうな、とは思っていた。思っていたけど、いざタイトルが発表されたとき、なんだかぜんぜんそそられなかった。というかむしろ、「もういいかな」とさえ思ってしまった。

ものごころついたころのトトロやラピュタからはじまり、ちょうど30歳になったときに公開された『風立ちぬ』まで、ジブリ(というか宮崎駿監督の)作品はわたしの人生とほぼ同時代、完全に重なるように存在していた。

個人的に『風立ちぬ』からの引退会見をリアルタイムで追っていて、「受け取るものは受け取り切った」みたいな不思議な感情がわいていた。ありがとうございました、みたいな。

だから、40歳になった今さら、どこか自己啓発的なタイトルのこの映画を、あんまり観たいと思わなかったのかもしれない。

でもどこかでうっかりネタバレを踏む前に、さっさと映画館で観ておくか……と、急にふと思い立ったのだった。まんまとプロモーションの戦略にはまったのだろう。

80歳を超えて、なんちゅう作品をつくるのだろうこの人は、と思わずにはいられなかった。複雑な余韻が残って、今監督がこの作品をつくり、このタイトルをつけ、公開に踏み切ったその意味をぼんやりと考えている。

いちばんの贅沢は、すばらしいクリエイターの仕事をリアルタイムで追いかけられることなのだと、改めて感じている。