父を見送った日から、気づいたら2週間がたっていた。
もちろん喪失感や悲しみはある。あるのだけれど、家族が一致団結して難局を乗り切った、外部環境や社会状況によるマイナスの影響が最小限で済んだ、ままならない中でも本人の意思をできる限り尊重できた、自分たちで考えうるすべての選択肢を並べて道を進んでこれた、物理的にも精神的にも全員が疲弊しきる前に幕が閉じた……などなど、奇跡的なかみ合いの連続によって、不思議と穏やかな気持ちのまま、自分の日常に戻りつつある。
日常に戻る。いざそうなってみると、「さて、これからどうしよう?」という気持ちが、とても強くわきあがってきている。
両親がいなくなり、自分には新しい家族がおらず、ひとりで東京のアパートに戻ったとき、どうしても考えてしまう。別に親や家族がいるいないで自分の生き方が変わるわけではないのだけれど、ちょうど40歳になったことだし、なんだか人生のひとつの節目に自分が立っているような気がする。
じゃあ何をしたいのか? どうしたい? と自問自答してみても、今のわたしからは何も出てこない。びっくりするくらい何もない。ゼロ。無。
考えてみれば今まで、「これがやりたい」と考えて選んできた経験は少ない。どちらかといえば「こうなりたくない」「これはやりたくない」「これは避けたい」みたいなことを、うまくかわすためのルートをたどってきたから。
だから困る。とても困っている。