うっかり、小学校5年生の子が書いたという小説にコメントを求められる機会があった。滅多にそんなことはないのでいささか緊張したけれど、ジャンルは違えどいちおう書き手のはしくれではあるので、どうにかこうにかアドバイスをひねりだす。
そういえばわたしも小学生くらいまでは、好きな小説や童話、マンガ作品をまねて、適当な設定をつけた文章を書き散らしていた。完全に「まね」であってオリジナリティはほとんどなかったが、“作家”というひびきにあこがれを抱いていたことは確かだ。
自分でも不思議なのだが、中学生になると、そんなわたしの創作(?)意欲はすぱりと消えたように失われてしまった。
言葉への関心は高い方だったし、小説を読むことは変わらず好きだったけれど、「自分で何か書きたい」という気持ちは、いつの間にかすっかりなくなっていたのだった。
とはいえ、当時、世の中に普及しはじめたばかりだったインターネットに日記のようなものを書き散らしては放流していたので、「書く」こと自体から離れたことはないのだけれど、「作品をつくる」という視点をもったことはそれ以来まったくない。
「創作」って何なんだろうなと、40歳を手前にした今あらためて思う。今も別に「新たな物語をつむぎたい」なんて気持ちはさらさらない。もう世の中にはすばらしい物語が読み切れないほどあるのだから。
それでもわたしは、この先も一生、「書く」ことをやめられないのだろう。