思いがけないこと、というのは思いがけないときに起こるから「思いがけない」のであって、本当に思いがけないことが起きると、「思いがけなかった」とかいう月並みな感情はわいてこず、混乱と冷静のあいだをそれはもう忙しく行ったり来たりすることになるんだな……ということを久しぶりに体感している。
そしてもうひとつ、やっぱり人は、自分のためには生きられないのかもしれないなと、なぜか神妙に感じたりもしている。
ほとんど自分自身の生活にしか影響がないことはひとつも進まなかったのに、他の人が関わってくると自然と身体が動いて、最近とても苦しんでいたわたしは、自分の感情の変化にものすごく驚いた。
さらにもうひとつ、10年という時間は人を成長させるのだということ。経験は自分のどこかにひっそりと、でも着実に蓄積されているのだということ。
あのときまったくできなかったことを、今度は冷静に一つひとつ積み重ねるのだ。あのとき、本当に何にもできなかった自分を、ここでまた繰り返したくない。
たったひとつの状況変化で、こんなにも自分の心情が動くのか……と、妙に冷静に自分を観察している自分がいる。
あのときもそうだった。身近に困惑したり、動揺したりしている人がいると、誰かの背筋が自然と伸びる。そうやって、人間の集団というものはバランスをとるようにできているのかもしれない。
自分のメンタルのバランスを、そうして取ろうとしているのかも。