#494 過去の誰かに 【三日坊主とひとりごと】

誰かのふとしたひとことに、きっと相手が想像している以上に傷つくこともあれば、その人が思いもしないほど救われることもある。

言葉とはそういうもの。だから自分も取り扱いには気をつけたいなと思う。

気をつけたい、とは思うものの。

人の想像力には限界があって、わたしも今までの人生で、数知れず人を傷つけているのだろう。それはもう、どうしようもないことだ。後悔したところで取り返しはつかない。

人はささいなことほど、笑ってしまうくらい細かいところまで覚えているものだ。

その言葉を投げつけられたときの、相手の表情。自分の体温が瞬間的に上がった感覚。深く心をえぐられた言葉ほど、もう忘れようとしても忘れることができない。

いつまでもそれに執着するのもどうかと思うので、けっして口には出さない。ただじっと、時間が自分を癒してくれるのを待つばかりだ。

と同時に、自分にとって「救い」になった言葉も、鮮明に心に残る。

きっと言葉を発した本人は、何も覚えていないだろうと思う。感謝の言葉を伝えても、「そんなこと言ったっけ?」と、どこまでも軽やかに返される。

できれば傷つきたくはない。不用意な発言で相手を傷つけたくもない。でもそれを恐るあまり、コミュニケーションをあきらめてしまったら本末転倒だ。

誰かを救うためだけに言葉を使うわけじゃない。だけど言葉にしないと何も伝わらない。おそるおそる、真綿をそっと紡ぐように、言葉を編んでいく。