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「16歳で上京したときから、ずっとバンドをやりたかったんですよ」
ステージの彼は、そう言っていた。とてもうれしそうに。
2019年4月29日。わたしは久しぶりに、七尾旅人さんのワンマンライブに訪れた。
今回は、ソロではない。バンドのライブだ。しかも、20周年記念ツアー。
いよいよ明日の東京ワンマンでバンドセットはファイナル。
ほんとに最後でいいのか?
最高のメンバーと、新しいスタート地点に立っている気もして。ぜひ観に来て、解散をくい止めてください。 pic.twitter.com/qYUjQ9reYy
— 七尾旅人 (@tavito_net) April 28, 2019
彼の本格的なワンマンライブをホールではじめて見たのは、2014年だった。
あのとき、日本青年館の「舞台」と「客席」にくっきりわけられた空間に立った彼は、なんだか、とても所在なげに見えた。
少なくとも、下北沢の小さなカフェで演奏したときのような柔らかな自由さや、渋谷のライブハウスで大勢のミュージシャンに囲まれ、ノイズを出しまくって大暴れしていた勢いは、影をひそめていた。
なんだか、彼はずっと苦しそうだった。音を身体の中からどうにか絞り出しているような……。
でも、今回は違った。
『星に願いを』にはじまり、アルバム収録曲を全曲、観客と歌ったかと思えば、これまでの代表曲をバンドサウンドで怒涛のように畳みかけ、アンコールは電気グルーヴの『虹』に『Wonderful World』。
バンドの演奏と共に、のびやかに歌う彼はなんだか終始しあわせそうで、わたしは前のライブを思い出し、勝手に涙ぐんだりしていた。
「16歳のときから、夢だったんですよ」
彼は、何度もそう言っていた。20年かけてたどり着いたステージで。
その温度は、すばらしい音楽と共に、確実にわたしたちに届いた。