朝、キッチンにコーヒー豆がなかった。
7時間は寝たはずだったけれど、なぜか疲れは十分に取れておらず、なんとなく重い身体をムリやりベッドからはがす。
時計はもう7時半を指している。朝だ。どんなに天気がよくてさわやかな4月の朝でも、ぜんぜん気分が乗らない日だってある。
眠い目をこすりながら、キッチンに向かう。片付けがおっくうでそのままにしていた小さな折り畳み式のテーブルの上には、昨夜のみきれなかった「ほろよい」の缶がそのまま残っていた。
翌日の自分が機嫌を損ねることがわかっているのに、「もうひと仕事」がいつもできない。こればかりはもう、どうしようもない。
昨年の夏ごろから、起きてすぐに朝食をとらなくなった。
わたしは食にこだわりも興味もなくて、毎食の献立を考えたり、何日分かの食材を調達したり、手間のかかる調理をしたりすることが本当に苦痛だ。
だから最近はもっぱら、「一日二食」生活である。一食分のマイナス。朝食兼昼食(洒落ていえばブランチ、というのだろうか)をとるのはいつも10時を過ぎてから。
食事は後回しだけれど、仕事にかかる前にコーヒーは必ず一杯飲む。いつも、手動のミルで豆を挽いて。もはや決まった儀式のように。
それなのに、今日はコーヒー豆を切らしていた。うっかりしすぎだ。
なんだか締まらない時間をすごし、家を出る。
そう。どんなに天気がよくてさわやかな4月の朝でも、ぜんぜん気分が乗らない日だってあるのだ。