#440 自覚なき消耗【三日坊主とひとりごと】

「自覚なきストレス」というのは、確かにある。アドレナリンが出ているような気分。楽しい。ワクワク。もっとやりたい。稼ぎたい。仕事したい。

「やらされている」環境じゃなく、自分からどんどん新しいことに飛び込んでいるときでも、必ず「ストレス」は存在する。

それに気づいたのは、目前に迫った締め切りと山積みの原稿を前に、一文字も文章を書けなくなってしまったときだった。

当時のわたしはフリーライターとしてそれなりに仕事をいただいており、新しい長期のプロジェクトに参加しはじめたばかり。

平日の日中は取材と打ち合わせで埋まり、夜中や土日に原稿を書いて、どうにか帳尻を合わせていた。でも、苦しいと思ってはいなかった。

そんな最中の、「書けない」だった。もう、脂汗が止まらなかった。いま思い出しても胃がぎゅーっとなる。

結局、さんざん迷惑をかけた挙句に平謝りして長期プロジェクトからは降り、新しい仕事もセーブ。手元にあったインタビュー原稿はどうにかこうにか形にして納品したけれど、その後2か月くらい、ぼんやりしてすごした。

そのとき抱えていた案件の大半は、取材対象者の人生にぐぐっと踏み込むような、インタビュー記事を書く仕事だった。

取材した相手のことと読者のことに脳みそが独占され、知らずしらずのうちに、“自分の意思”が生活から削ぎ落とされていた。

自覚なき消耗にご注意を。ときどきは自分のことを、思い出す時間をつくってほしい。