若手の人と仕事するとき、関係性にもよるけれど、できるだけ注意するようにしていることがある。
「仕事を“ 投げる ”っていう表現、使わない方がいいよ」
たかが言葉、されど言葉。仕事を“投げられる”側に立ってみたら、あんまりいい気分がしないでしょ?
……なんてエラそうにいってみたものの、わたし自身も20代前半、会社員だった頃は、ふつうにこの表現を使っていた。当たり前のビジネス用語ですよね、みたいな顔をして。
でもあるとき、「先方に投げておきますね」といつもの感じで話していたら、社長に怒られた。
情けないことに、わたしはそこではじめて、自分が使っていた言葉の意味に気づいた。顔から炎が出てそのまま焼き尽くされるんじゃないかと思うくらい、恥ずかしかった。
“投げる”って、なによ。投げつける、放り投げる、投げわたすーー 確かに、人に仕事をお願いするときに使う言葉じゃない。
当時ディレクターだったわたしは、自分の手元にあるボールを、とにかく四方八方に投げつけるように仕事をしていたと思う。
「投げる」だけじゃない。「さばく」とか「片付ける」とか「ようやくはけた」とか。
自分がその行動をどう認識しているかは、無意識のうちに言葉に出てしまうものだ。
フリーになってからは、なおさらそれを感じるようになった。“投げられた”仕事は、一瞬でわかるから。
それは一緒に働く人に対して使っていい言葉かどうか、ときどき立ち止まってみてほしい。