仕事柄、とてもよく「どうやって文章が書けるようになったんですか?」と聞かれる。ものすごく聞かれる。マジでめっちゃ聞かれる。
プロのライターになったということは、何か特別な勉強をしたんじゃないか。どこか学校に通ったのか。そう考える人が、一定数いるようだ。
そしていつも、わたしは返答に困る。
さすがにライターを名乗りはじめてからは、それなりに努力もしてきた。雑誌のコラムを写経してみたり、他のインタビュー記事の構成を分析したり。でもそれまでの30年近くは、特別なことを何もしていないのだ。
文章を「書く」ことが得意になったのは、たぶん、幼少期以降の読書体験のおかげだと思っている。つまりは、「何度も推敲して世の中に送り出されたプロの文章」を、どれだけ読み込んできたか。
わたしは小説が好きなので、好きな文体の作家さんが何人かいる。小川洋子さん、レイモンド・チャンドラー(清水俊二さん訳の方が好み)、塩野七生さん、西加奈子さん、藤沢周平さん、よしもとばななさん。作家以外では西村佳晢さん、古賀史健さん。
それぞれの方が書く文体のちがいを感じながら、あらゆるテクニックや感情が詰まった「プロの文章」に触れてきた経験。それが「自分が書く」文章にも生きているのだと思う。たぶんな。
もちろん、そんなことこれまでの人生でまったく意識したことはない。わたしはただ、好きな小説を、好きなように楽しく読んでいただけなのだけど。