もう15年以上もむかしのはなし。大学入学直後、何かイベントの準備をしているときのことだった。
「あ、そんな重いもの持たなくていいよ! 俺らがやるよ!」
同級生の男の子がさらりといった言葉に、思わずぎょっとして手を止めた。
彼の名誉のために付け加えておくと、それはごくごく自然なシチュエーションで、別に下心も何もなかったと思う。目の前で重い荷物を運ぼうとしている女子を見て、反射的に声をかけてくれただけだ。
その数ヶ月前まで、わたしは女子校の生徒だった。
重かろうと軽かろうと荷物は自分たちで運んでいたし、当たり前だけどクラスを引っ張るリーダーも、スポーツで大活躍していた選手も、学年トップの成績をほこる秀才も、全員女の世界。
「女だから」こうありなさい、という教えを学校から受けたことも、一度もなかった。
だからいきなり「女あつかい」をされて、何というか、びっくりしてしまったのだ。「へっ……なんで?」と。
ありがたいことに、大学でも、その後はたらいたどの会社も、性別に対しては結構フラットな環境ですごすことができた。
「女だから」こうしろああしろ、といわれたこともあまり記憶にないし、「女だから」といって仕事で著しく損したことも、ないと思う。
それがどんなにしあわせなことだったか、気づいたのは本当に最近だ。
「女子力」という言葉は“呪い”だと、誰かがいっていた。安易に使わないように、そっと丸めて捨てようと思う。